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馴初め
 LotusEUROPAって車の存在を知ったのはかれこれ25年ほど前に流行した「スーパーカーブーム」の時でした。田舎に住んでいた僕にとって雑誌やテレビで見る都会の「スーパーカーショウ」は遠い外国での出来事ように感じられたものでした。しかし、池沢先生の「サーキットの狼」は授業が終わると近所の友達の所へ入り浸って読みふけっていたのを思い出します。
 徐々にブームが盛り上がってきて、とうとう僕らの住んでる田舎にも「スーパーカーショウ」がやってきました。今から思えば大変貴重な車も来ていたのを思い出します。例えばディーノの206。これって当時12気筒でないとフエラーリーでは無いって思ってて、全然相手にしませんでした。今思えば・・・もっと写真撮っておけば良かった。他には「イオタ」として展示してた「ミウラS改」。これもイオタは1台しか無いはずだから、これは偽もんだって相手にしませんでした・・。でも実際は本物のミウラより金掛かってんぞぉ〜っ!って感じですよねぇ。ははは。

 そんな中でひときわちっちゃくて、ぺったんこの車が有りました。当時小学生に絶大な人気を誇っていた車。LotusEUROPA SPでした。車高の低さは世界一。並み居る大排気量車を向こうに回し大立ち回りを演じられる凄いやつ。今思えば・・・主催者側もこの車を忘れて「スーパーカーショウ」を開く事は出来なかったんでしょうねぇ。ご苦労様でした。で、田舎での「スーパーカーショウ」故、唯一運転席に座らせてくれたのがこのヨーロッパでした。そりゃそうでしょう。一案安い車ですもんねぇ。けど、その時ヨーロッパに乗った小学生の内少なくとも一人は、こうしてまたヨーロッパに乗ってるんですから、すりこみってたいしたもんです・・・。

 それから20年程の歳月が流れ、子供も出来て、一戸建ても買って・・。ふと思ったんですよねぇ。後は自分が長く付き合って行ける車を買おうって。幸い6年間ほどミニに乗ってて、ほどよくトラブル関係は経験してたので憧れの60年代旧車を手に入れようと思ったわけです。そこで昔の擦りこみが効いてきます。そうだっ!ヨーロッパだっ!しかし、ミニに長く乗ってた関係からイギリス車に関する情報もそれなりに蓄えてましたもんで、普通のヨーロッパじゃ趣味性が薄いなぁなんて生意気にも考えてしまいました。少しヨーロッパに付いて勉強した所、出てきましたねぇ。47GT!これぞ究極のヨーロッパ(ほんとは別物ですが)。 しかし、その時点でも出物は殆ど無く、有ってもヒストリーバリバリの一千万円台!!こんなのは普通のサラリーマンには到底買えません。しかし、道は未だ残っておりました。殆ど同じシルエットでS2ってグレード?が有るって知ったんでした。 
 早速「カーマガジン誌のバザール欄でS2の出物を探し始めました。当時(1995年ごろ)は結構S2の売りたしが多く出てて、年式と金額のおおよその検討を付ける事が出来ました。大体当時250〜350万円の価格帯で程度そこそこの車両が購入できていたと思います。金額的にはMINIを売りに出して逆立ちしてもかなりきつい額でしたが、最悪ローンを組むつもりでショップの広告も参考にしたりしました。

 そうやって夢だけ膨らましているある日、京都の山科に住む方がヨーロッパの売りたし情報をカーマガジン誌に掲載されました。おぉっ!これはっ!と思って、早速オーナーの方に会社からFaxを入れてみました。すると未だ車は売れてませんので見にきてくださいとの事。素早く会う段取りを整え、名神高速京都東ICの乗り口前の広場で待ち合わせることにしました。

 1時間も前から待ち合わせ場所で待機してましたよ!ドキドキしながらね!そして数台後ろのバンが僕の方に近づいてきたときそのバンの後ろからひょこッと真っ赤なS2が姿をあらわしました。感激しましたねぇ。高速の入り口とあって交通量は多めでいろんな車が通って行きますが、どの車よりはるかに低い車高!日本では考えられ無かった(1968年当時)であろうスタイル!もうっ一目で気に入ってしまいました。そして何より決定的だったのがノーズがType54だった事でした。初期型のライトの間にウインカーの無いタイプではなかったですが、ライトの切り欠きが円形である俗に言うType54、S2中期型ってモデルでした。

先ずはご挨拶。こんにちわって言いながらも目は傍らに停まっているS2に釘付け!この時はMINIで行ってたんですが、その車高の低さに驚愕してしまいました。こ、腰のラインより低いっっ!(実際は腰よりは高いです)ど、どうやって運転するんだ?あっ、その前にどうやって乗り込むんだ?(^^;;;
 一通りの挨拶も終わりオーナーが「乗ってみますか?」って言ってくれました。えっ?僕がこんな凄い車を運転するの?って感じ。それほど自分とはかけ離れた世界の車って思い込んでましたねぇ。この時はびびってしまって、助手席に乗せてもらう事にしました。
 小学校の頃に1回だけ座らせて貰った事があるシートですが、いざ乗り込もうとするととてつもなく低い位置に座面があるので、一瞬戸惑います。「ど、どちらの足からいれたらええの・・?とりあえず左から入れれば良いんだよなぁ」なんて感じでした。思ってたより低い座面にドスンとお尻を着いて、左足をグイッとねじ込んで何とか乗り込めました。乗り込んでみると思ってたよりルーミーなシートで案外快適です。中が狭そうですが座ってしまうと、頭の上も充分間隔があり、外の景色も良く見えます。でも流石にシートの背もたれは普通の車よりかなり寝ているので顎を引いてないと
天井を見てしまいます。ははは。

 さて、「それではいきますよっ」って出発です。京都は珍しい車が多いと言っても、この車で街中を流すと流石に注目されます。音もなかなか勇ましいしね・・。でも、僕はそんなことよりもヨーロッパに乗せてもらってるって言う事に感激してました。フル加速時には今まで乗った車のなかで一番のインパクトを受けました。目線が低いので尚さらかも知れませんが、そうとうスピード感が有ります。


 京都東ICの付近を500M程移動しただけだったのですが、完全にヨーロッパの虜になってしまいました。

  ・ 手首を返しただけでスパット動く鼻先!
  ・ 今まで経験した事無い加速感!
  ・ 今まで経験した事無い後ろから聞こえる爆音!
  ・ 自分を中心に回っているように感じられるコーナーリング!
  ・ 惚れ惚れする流れるようなスタイリング!?

 てな感じです。
 
 同乗が終わり車を降りても感動は続いてました。既に購入を決意して金策を考えてたりもしましたが、オーナーの方には即決はできないのでまた改めて返事しますと言うつもりでした。んがぁ・・!もう心の箍は外れてしまってましたね。その場で買います・・・・で、お値段のほうは?


 家に帰って嫁さんになんて言おう、何時切り出そうと悶々としてましたが速いに越したことは無いってんで、思い切って打ち明けました。その時子供が1歳・・・家のローンも30年・・・でも快く?「お金ど〜〜すんのよっ!」って許して?くれました。なははは、事後承諾って強いわぁ。    <つづく>



years 1969
engine RENAULT OHV
gearbox 4 speed


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